2009/04/30

アバロン Symbolのツィータ断線-1(イントロ)

我が家のオーディオ機器のスピーカはアバロンの"Symbol"である。
以前はマーティンローガンの静電型スピーカ"Aeirius i"(エリアスi)を使っていたが、3年ほどで埃が静電パネルに堆積して音量レベルが低くなってメンテの必要があった(まともに交換すると10万円近くかかる)。メンテ費用と新規購入を天秤にかけて、価格の割には繊細でサウンドステージを感じられそうなSymbolに変えたのが6年前(そんなになるのか…感嘆と溜息)。Aerius iの引き取りを条件に半額程度で新品を安売りしているのを購入した(B級品と言っていた)。私のような事情が多かったのかそのマーティンローガンも2005年以降日本へ輸入されていない(修理サポートはある)。

ところが6年もがんばってきたSymbol君、3ヶ月ほど前からスピーカの片CHのツィータから音が出ない。なんのかんので調査を先延ばしにしていたら3ヶ月も経ってしまった。
原因として考えられるのは
  • ツィータ内部の断線
  • スピーカの配線の断線(コネクタであれば外れ)
か。以前住んでいた部屋がかなり暑く、湿度もあったように思う。腐食の可能性が高いのでツィータの断線が一番考えられるが、配線の外れだと自分で修理できるのでお財布的にうれしいなと淡い期待と持つ。
ダイニングセットの修理に合わせて部屋のレイアウトが変更になると部屋の反射が変わったせいか、音が良くなった気がしたので、ここぞとばかり思い立って、輸入代理店である大場商事の問い合わせフォームで問い合わせる。記入事項は住所・氏名・電話番号・メールアドレスの他に装置名、装置のシリアルナンバー(S/N)も必要だ。店名とS/Nは悪用される可能性があるので伏せた。
○○と申します。

アバロンのSymbolをXXXよりB級品ということで2003年4月に購入したものです。貴社より発送していてだきました(引っ越しにより住所が変わっています)。
そのSymbolですが1ヶ月ほど前より片chのツィターが断線しているのか音が出ません。
SP自作の経験はあるので断線かどうか特定作業にかかろうかと思いましたが、まずは貴社でどのような修理対応が可能か確認したいと思い、問い合わせた次第です。
(正常なもう片chのS/Nはxxxxxxxでした)

あと、気になる点が2点ほど。
引っ越し前の部屋の環境のせいか、最近突き板の剥離が激しくなってきました。
ウーファの1本が低音の比較的大きめの入力時に底突き(ストロークを制御できていないような)でビビるような音を発生することがあります。
他所でも事例は発生しているでしょうか。

まずはツィータを直したいと考えております。

お忙しい所恐れ入りますが、ご連絡のほどお待ちしております。
表面の突き板も剥離が激しさを増している。ツィータの断線も、突き板の剥離も、ウーファの底突きも湿気に関係がありそうである。ちなみにアバロンもマーティンローガンもアメリカ製である(両方とも湿気には弱いが音はいいよ)。
フォームを送信するとその日の内に折り返し電話が来た。要約する(実際は丁寧な受け答え)。
  • ツィータの修理はできずにユニット毎の交換となる。在庫はある。
  • 費用は次の通り。ユニット:42千円、工賃:15千円、消費税:5%
  • 沖縄から本体を送るのは送料がかかるので、自分で交換作業をするならユニット代のみで結構。ただし故障ユニットは返却すること。交換作業における破損については保証できない。
  • ツィータ断線や突き板剥がれの事例はあるが少ない。ビビリ音は接着剤の剥がれによるものだろう。
まずは、本当にツィータの断線かどうかを確認して大場商事へ連絡することとした。

画像はWikimedia Commonsから、Symbolを見ると思い出すオベリスク、ワシントン記念塔(Washington Monument)。ワシントンに行ったことはないが。

続く2(断線確定)

2009/04/20

ライフハック - 「当たり前」はあなたの経験

ライフハックシリーズ第8弾。
「当たり前」「普通」「一般的」「常識」「当然」などの言葉を用いるときには、それが自身の経験の範疇でしかないことを意識しよう。
相手が語る場合でも自分が語る場合でも(相手の経験から来た「当たり前」と自分の経験から来た「当たり前」)。
そんなことも分からんかねぇ、常識的に考えて当たり前のことなのに、当然、こういうことは一般的なことでしょう、普通は。とか言う人がいたら気をつけましょう。オレはお前じゃない。

画像はWikimedia Commonsから、Chuckyという猫。憂いのまなざし。ウチの猫は怠惰のまなざし。大違い。

2009/04/11

「ペリリュー・沖縄戦記」ユージン・B・スレッジ著

講談社学術文庫、伊藤真・曽田和子の訳、2008年初版。沖縄戦の部分は以前に「泥と炎の沖縄戦」(外間正四郎訳、琉球新報社、1991)として出版されていたようだ。
原著は"With the Old Breed : At Peleliu and Okinawa"(Eugene B. Sledge, Presidio Press, 1981)。
画像は、訳本がはてなへ、原著がWikipediaへリンクしている。

18才で志願兵として入隊した海兵隊員の回想録。著者は復員後最終的に生物学の教授となった。

今まで、沖縄戦に関しては住民側の立場の記録は時を変え場所を変え何度も読んだが、米国側の生々しい記録はこれが初めてである。欠けていたピースが見つかった感じだ。

著者は公式な文書や歴史書と実際に筆者が体験した前線での様相との乖離が激しいことに驚いたことが執筆に至った動機の一つのようだが、この回想録を記述することによって戦友たちへの責任を果たすことが著者の務めだと感じていたようだ。ただし、書き上げるまでには、長い時間が経っている。夜中に襲ってくる悪夢から目覚めて冷や汗や動悸に襲われることがなくなるまで待たなければならなかった。1944年9月15日に始まったペリリューでの1ヶ月半、1945年4月1日沖縄上陸以降の3ヶ月、正味4ヶ月半に及ぶ戦いの傷跡を時が癒してくれるまでに実に36年近くもかかっている。
太平洋戦線での体験は脳裏を離れることがなく、その記憶は私の心につねに重くのしかかってきた。(中略) 彼らは我が祖国のためにあまりにも大きな苦しみを味わったのだ。一人として無傷で帰還することはできなかった。多くは生命を、そして健康を捧げ、正気を犠牲に捧げた者もいる。生きて帰ったきた者たちは、記憶から消し去ってしまいたい恐怖の体験を忘れることはできないだろう。(p.4 はしがき)
ペリリューも沖縄も戦いの前線は両国共に常に凄惨な修羅場、地獄絵図が展開される。ただ、同じ地獄にしても、米国側には、後方支援があり、物資の補給があり、兵の補充があり、部隊の交代があり、束の間の休息があり、「100万ドルの負傷」で本国へ帰るチャンスがある。その米国でさえ上述の引用のように生き残った体験者に暗い影を落としている。対して日本側は物資の補給も、兵の補充もなく、最後には逃げるところも無く、負傷は即死を意味し、生きる望みは無いに等しい。どのように死ぬかだ。目の前の地獄から逃げおおせたとしても待ち受けているのはまた別の地獄である。

日本兵による海兵隊員への死体損壊目撃も提示されているが、本書が特筆すべきなのは、同じ海兵隊員による蛮行の数々(死にかけている日本兵からの金歯奪略の目撃とか)や、夜中日本軍に悟られてはいけない時に精神的に耐えきれなくなった同胞を静かにさせるために行われたこと(朝には死んでいた)、親友同士の悪ふざけによる事故死(空砲だと思ったら弾が入っていた)など、包み隠さず記述していることである。戦争の狂気をあからさまにする。単純な米国万歳の本ではないのである。
もう一つ、通湊低音のように流れているのが共に戦った戦友達との信頼関係だ。命を託した「信頼」はすでに「家族」と同義であると述べる(逆に言うと信頼できる関係が家族とも言える)。

訳者あとがきにも解説にも繰り返し述べられているが著者は「無益」「無駄」な命の消費を嘆き、戦争がもたらす「狂気」と「むごたらしさ」をひたすら伝えようとする。
われわれは頭のつぶれた敵の将校を砲壕の端まで引きずっていき、斜面の下に転がした。暴力と衝撃と血糊と苦難−−−人間同士が殺し合う、醜い現実のすべてがそこに凝縮されていた。栄光ある戦争などという妄想を少しでも抱いている人々には、こういう出来事をこそ、とっくりとその目で見てほしいものだ。敵も味方も、文明人どころか未開の野蛮人としか思えないような、それは残虐で非道な光景だった。(p.456 第十五章 苦難の果て)
同時に、当初は日本兵に対しても同じ戦争に巻き込まれた人間として見ていたが、それも同僚たちが殺戮されるにつれ日本兵を「ジャップ」や「ニップ」と呼び憎悪を露わにし同情の念が消えていったことも告白する。
しかし、沖縄戦では、住民を「ニップ」とは違う扱いをしていた記述もある(傷を負い自分を殺すよう嘆願している老婆の救護を要請する隙に、おとなしく物腰の柔らかな若者が彼女を殺害したことに対し逆上し、同僚と共に彼に怒りをぶつけている。
「俺たちが殺さなきゃいけないのはニップなんだ。こんなばあさんじゃないんだ!」(p.434 第十四章 首里を過ぎて)
ペリリュー島では住民は島外へ移住させられていたが、沖縄戦では住民が日本軍と行動を共にした結果、その多くが砲弾に巻き込まれ死んでいったのではないかと思う。
また、時に現れる沖縄の風景や景色に触れるたびに美しいと描く。

保阪正康(ノンフィクション作家)による解説の最後。
日本軍の将校、下士官、兵士からこのような内省的な作品が書かれなかったことに、私は改めて複雑な思いを持ったのである。(p.476 解説)
Wikipediaのペリリュー島の戦いには、ニミッツ提督が日本軍の勇敢さを讃えたとされる詩文が紹介されているが、Wikipediaにさえ言外に捏造と思わせる記述ぶりで、実際の英文も中学生の教科書的であり日本人が作ったとしか思えない。歴史の歪曲は死んだ兵士たち住民たちへの冒涜であり、より賢い未来を放棄するものとは思えないのだろうか。
ただ、原著が発刊されて27年、最初の訳本が出版されて17年経った今出版に至った関係者の執念に感動し、感謝すると共に、かつて「敵国」だった米国側の記録を出版にまでこぎ着けた彼らの姿勢に一筋の光明とも言うべき良心を感じるのである。

1945年から64年、原著の初版から既に28年の歳月が流れている。これらの戦いで肉体、精神の両面で運良く生き残った著者も2001年に亡くなった。死に際して何を思っただろうか? ペリリューと沖縄を再訪したことはあったのだろうか?

伝えている内容と共に筆者の冷静な筆致に加えとても読みやすい訳で好著だと思うが、訳本では沖縄の地名のふりがなに2点ほど誤りがあるようなので指摘しておく(リンク先はWikipedia)。
  • p.340「安波茶」(あわちゃ → あはちゃ)
  • p.377「崇元寺」(タカモトジ → ソウゲンジ)
このポストを書く過程でものすごいサイトを発見した。
沖縄戦史公刊戦史を写真と地図で探る 「戦闘戦史」
圧巻なのは沖縄戦史の記述を日本米国両側の記録から浮かび上がらせ、それと共に戦場写真から撮影位置を探し出し、現在の写真と比較している。現在の住居の近くや実家の近くの写真もあってかつての戦場の上に生きていることを実感させられる。
沖縄は日に日に変わり続けている。土地の記憶も造成や住宅建築でなくなりつつあることが上述のサイトからもよく分かる。

歴史は繰り返すという。でも先人たちの悲惨な経験を未来に繰り返す必要はない。このような本だけで十分だ。

2009/04/06

省エネナビ復旧、1日後

前のポストの続き。

画像は電力センサを分電盤の外に出して1日経過後(2009/4/5、撮影はその翌日4/6)。グラフは正常、アンテナマークもバリ3(今時言わないか)。とりあえず大丈夫そうだ。

右画面のグラフのピークは、左がオーブンレンジ(私の素敵な奥様がパンを焼いたのでやや長時間)、右のピークが乾燥機(雨だったので)の使用。深夜24時に向けて少しグラフが右肩上がりになっているが、私の素敵な奥様が何か作業をしていたらしい。

左画面は上が1日の電力使用量、下が目標値。目標値の算出基準が未だに分からない。

昨日実家に寄った際に実家の電力使用量を見るとウチの半分くらいだった(両親二人暮らし)。実家で待機電力を消費するのは冷蔵庫とテレビ、コードレス電話くらいしかないのでその差が大きいのだろう。

2009/04/04

省エネナビ不調 → 電力センサを分電盤の外へ出し復旧

最初の1.5ヶ月は順調であった省エネナビだが、ここにきて1週間ほど不調である。
以前のポストはこちら。
省エネナビ導入
省エネナビ導入、続き

省エネナビの電力センサと本体と間の通信に失敗しているようで、右画面のケータイの電波受信状況のようなアンテナマークが×マークである(写真を取り忘れた)。上手く受信出来ているとアンテナが1〜3本立つところだ。
その結果、写真にあるとおり、30分単位で表示される棒グラフに何も出なくなった(この写真は復旧後に撮ったのでアンテナが3本立っている)。日々の電力使用量が疑似リアルタイムで確認することが目的の一つだったのに、これでは何のために導入したか分からない。
たまに受信に成功すると、いまで受信出来なかった分が蓄積されているのか、いきなり棒グラフがポーンと飛び上がる。たぶん1日1日の累積値は大丈夫だろう。

しかし、さすがに1週間も異常な状態が続くと、何とかしなければと思い、重い腰を上げてみた(最近は比喩になってない)。
妨害電波を受けるような外部環境の変化は特に思い当たらないし、本体と電力センサ間の距離は直線でたった3mだ。それではと電力センサを分電盤内に押し込んでいたのが影響しているのかなと思った(分電盤開腹の写真右上電力線の後ろ部分)。電力線の向こう側なのでシールドされているようでもあるし、電力線から放射される電磁波の影響をもろに受けやすい場所でもあった。そういえば本体も電力センサも位置はずっと固定なのに表示されるアンテナの本数はまちまちだったことも思い出した。

そこで初心に返り(まだ初心者なんだが)、マニュアルの例に倣って、電力センサを分電盤の外に出すことにした。
家族が眠りについた後、脚立を取り出し、分電盤を開け、電力センサを取り出し、電力センサの状態を点灯状態で確認する底部のLEDが見やすい位置に来るよう配置を考え、分電盤を閉じ、脚立を降り、本体を確認するとアンテナは3本。通信は成功しているようだ。
しばらくはこれで様子を見てまた問題があればその時考えよう。

省エネナビで使われている特定小電力無線は設置環境に結構気をつけないといけないのかも知れない。

(追記)
続きがあります。

2009/04/03

米軍基地内における通信の扱い

0. 初めに
仕事で米軍基地内の軍隊やシビリアンへ通信サービスを提供することがあるので、米軍基地内における電気通信についてまとめてみた。このポストのシビリアンとは、軍隊に属さずに基地内で業務を行う民間企業や米国人などを言う。
正式には総務省の見解を伺う必要があるのだが、それはそれとしてひとまず置いておく。
ネット上で探し得た情報から追いかけてみる。
要点は箇条書きにした。

1. 米軍と日本の通信に関する法律の関係
概要はyahoo!にあった。
在日米軍の関連情報
中段あたりに電波法、電気通信事業法と有線電気通信法についての言及がある。
電波法の特例
米軍の無線局については電波法の適用がない。
日米安全保障条約第6条施設・区域並びに日米地位協定の実施に伴う電波法の特例に関する法律(昭和27年法律第108号)
電気通信事業法等の特例
電気通信役務に関する料金について電気通信事業法の適用がない。米軍が設置する有線電気通信設備について有線電気通信法の適用がない。
日米安全保障条約第6条施設・区域並びに日米地位協定の実施に伴う電気通信事業法等特例法
しかるに、二つの特例を見るといずれも「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定(日米地位協定)」の定めるところによるとある。
すなわち、「電波法」と「料金」と「米軍が設置する有線の電気通信設備」については
  • 日本における電気通信の法は適用されない
  • 地位協定の定めるところによる
となる。

2. 地位協定
その地位協定のどこが関係してくるかというと第三条(施設及び区域内外の管理)(pdf)と第七条(公益事業の利用)のようだ。
第三条の抜粋は次のの通り。
第三条 施設及び区域内外の管理
合衆国は、施設及び区域内において、それらの設定、運営、警護及び管理のため必要なすべての措置を執ることができる日本国政府は施設及び区域の支持、警護及び管理のための合衆国軍隊の施設及び区域への出入の便を図るため、合衆国軍隊の要請があつたときは、合同委員会を通ずる両政府間の協議の上で、それらの施設及び区域に隣接し又はそれらの近傍の土地、領水及び空間において、関係法令の範囲内で必要な措置を執るものとする。合衆国もまた、合同委員会を通ずる両政府間の協議の上で前記の目的のため必要な措置を執ることができる。

合衆国は、1に定める措置を、日本国の領域への、領域からの又は領域内の航海、航空、通信又は陸上交通を不必要に妨げるような方法によつては執らないことに同意する。合衆国が使用する電波放射の装置が用いる周波数、電力及びこれらに類する事項に関するすべての問題は、両政府の当局間の取極により解決しなければならない。日本国政府は、合衆国軍隊が必要とする電気通信用電子装置に対する妨害を防止し又は除去するためのすべての合理的な措置を関係法令の範囲内で執るものとする。
要約すると、
  • 米国は基地内において通信に必要な措置をすべて執ることができる
  • 日本政府は米国が要請があった場合は必要な便宜を法律の範囲内で必要な措置を執る
  • 米国も両国間の協議の上必要な措置を執ることができる
  • 米国は日本国内の通信を不必要に妨げてはならないことに同意する
  • 電波に関する問題は両国間の取り決めで解決する
  • 米国軍隊の通信への妨害の防止、除去のために日本政府は法律の範囲内で必要な措置を執る
となる。「米国は基地内で通信に関して何でもできますが、問題ある場合は協議しましょう、日本政府も協力します」というところか。

2. 地位協定第三条
その第三条には、より具体的な内容を補足とした合意議事録が添付される。

第三条に関する合意議事録
日米地位協定合意議事録
第三条
第三条1 の規定に基づいて合衆国が執ることのできる措置は、この協定の目的を遂行するのに必要な限度において、特に、次のことを含む。
1 施設及び区域を構築(浚渫及び埋立てを含む。)し、運営し、維持し、利用し、占有し、警備し、及び管理すること
(略)
5 合衆国が使用する路線に軍事上の目的で必要とされる有線及び無線の通信施設を構築すること。前記には、海底電線及び地中電線、導管並びに鉄道からの引込線を含む。
6 施設又は区域において、いずれの型態のものであるかを問わず、必要とされる又は適当な地上若しくは地下、空中又は水上若しくは水中の設備、兵器、物資、装置、船舶又は車両を構築し、設備し、維持し、及び使用すること。前記には、気象観測の体系、空中及び水上航行用の燈火、無線電話及び電波探知の装置並びに無線装置を含む。
また、日米合同委員会の合意事項も補足として利用される。
第三条に関連する日米合同委員会合意 →周波数の分配及び妨害除去(52年6月)(pdf)
 →米軍の電気通信施設使用(52年7月)(pdf)

3. 地位協定第七条
次に第七条は公益事業の利用について。
第七条 公益事業の利用
合衆国軍隊は日本国政府の各省その他の機関に当該時に適用されている条件よりも不利でない条件で、日本国政府が有し、管理し、又は規制するすべての公益事業及び公共の役務を利用することができ、並びにその利用における優先権を享有するものとする。
第七条議事録
合衆国軍隊に適用される電気通信料金の問題は、特に、千九百五十二年二月二十八日に署名された行政協定の協議のための第十回合同会議の公式議事録に記録されている第七条に関する陳述に照らして、引き続き検討されることとし、前記の陳述は、これに言及したことによりこの議事録に組み入れられたものとする。
公益事業には電気通信業も含まれる(労働関係調整法第8条)。
つまり、米国軍隊は
  • 通信サービスを利用することができる
  • その利用の優先権がある
であり、
  • 米国軍隊に適用される通信料金の問題は引き続き検討される(まだ決定していない)
となる。

4. 通信と地位協定まとめ
とここまで来て、
  • 米国は基地内において日本の通信関連の法の適用を受けない
  • 米国軍隊は日本の通信サービスを利用することができるし、優先権も持つ
  • 米国軍隊は通信に必要な措置はすべて執ることができる
  • 日本政府も法律の範囲内で協力する
  • 問題がある場合は両国間で協議する
ことがわかった。
しかし、シビリアンへの通信サービスの提供は曖昧だ。基地内では日本の電気通信に関する法律は適用されないが、シビリアンが通信サービスを利用できるとは書かれていない(できないとも書かれていない)。
実際にシビリアンへの通信サービス提供は珍しくなく、既に一般的だ。
ところで、米国軍隊が日本の通信サービスを利用するのは、機密の問題があるので一般的な利用に限られている。

5. 課税と地位協定
ついでに、シビリアンに関しては、課税、具体的に言うと消費税がかかる/かからないの問題がある。
日本側業者とシビリアンとの間の取引ではシビリアン側に納税の義務があるか不明(地位協定第十三条 課税(pdf))だが、日本側業者は消費税を納めるという事になっているらしい。
国税不服審判所
ホーム >> 公表裁決事例集 >> 公表裁決事例要旨 >> 消費税法関係 >> 免税取引
の中段にある
「在日米軍基地内にある取引先との取引が、日米地位協定の所得税等特例法に規定する免税取引に該当しないとした事例」
ちなみに第十三条によると米国軍隊の「構成員及び軍属並びにそれらの家族」には課税の義務はないと明記されている。

全体を俯瞰すると、税は取れる所からはとるけど、通信サービスは実際的にはシビリアンにもフル提供している現状では、バランスが取れていないように思う。

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画像は大正期の首里三箇首里三箇とは琉球王国時代に酒造が認められた地域、首里崎山町、首里赤田町、首里鳥堀町のこと。今でも石垣の一部や通りの狭さに面影が少しだけ残っている。

(2013/07/05修正: 項目立て等)

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