2020/02/27

「南の島の学級日誌―高校生と先生のマジメでユカイな対話集」砂川 亨著

沖縄の進学校、昭和薬科大学附属高等学校の先生が担任を受け持った高校3年生のクラスのみんなと交わした「学級日誌」を本にした。
「南の島」とタイトルに付くのは出版社が沖縄県外への販売を意識しているのでしょうね。
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著者で先生(担任)が学級日誌を始めるにあたって、日直は日誌に16行の8割以上の何かを書く、先生は生徒にが書いた分量以上、つまり最低でも300文字以上のコメントを必ず書く、という約束をする。
「日直は必ずスペースの八割は埋めること。サボった者は翌日も日直!」
「私も必ずコメントを返す。君たちは日直が回ってくる二ヶ月一度書くだけでいい。私は毎日、しかも君たち以上の量を書く」
日誌だから、学校のある日は原則毎日である。
結構しんどいとはずだけど、先生がやり遂げるから生徒さんもついて来たんだなと思ったし、実際、先生も意図があると書いている。
でも、この先生、日誌を読み終わると同時に書くべきコメントが頭の中で全文完成していて書くときは頭の中のそれを書き出すだけ、書くのにかかる時間は10分程度で仕上げているとのことで、文章を書くときコピペができないと泣きそうになるくらい四苦八苦している私にとって、この能力はうらやましい。

ある日の日誌に「人生にモテ期は3回存在する」という命題に、実は重解や虚数解があって、1回または1回も実在しない人もいるのでは? という会話が交わされているのは、解が3つあるのに二次関数を引き合い出すとはこれ如何にと思いもしたけど、驚きの発見を瑞々しい文章で描く才能と日々の勉学と生来のユーモアが融合していて、読んでるこちらも楽しくなる。

ともあれ、高校3年生の背伸びしているようなどこかかしこばった表現が愛らしいし、ときには意表を突く鋭い問いかけがあったり、対する先生も、生徒の投げかける疑問から敷衍してもっと先の向こう側にある何かを見せようとコメントを工夫をしているところに感心する。

それに、この本、クラス全員が登場するように気をつけている。
これは生徒たちにとって若い頃の自分が本に登場するのであるから一生の宝物になるに違いない。

好きなところをかいつまんで読んでもいいし、あっという間に読める代わりに、あのころの素直な感情に触れることができるので、まずはお手にとってはどうでしょうか。


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