2013/06/28

「世界はひとつの教室」サルマン・カーン著、三木俊哉訳

うちの息子である1号(♂13才)は学習障害っぽいところがあって、つまり、字を書くのが苦手とか、漢字を覚えるのが苦手(読めるけどよく書き間違える)とか。思い込みが強い(中学生になって緩和されてきた)とか、体育が苦手(体の制御が不得意)とか。ありていに言うとバランスが悪い。
一番の心配ごとは、中学の成績で数学だけが極端に悪いこと。ただし本はよく読んでいて(年間千冊)、理解もしているので、数学では何かに躓いたままじゃないか、と彼の親二人はにらんでいる。

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本書は、オンライン教育というか、eラーニングというか、ITをベースとしたビデオによる教育の最先鋒、今を時めくカーン・アカデミーの創業者、サルマン・カーン氏のカーン・アカデミーの創業から今に至るこれまでをつづったもの。
どのようにして、どのような考えのもとにカーン・アカデミーを立ち上げたのか、今後どうしたいのか、どのような可能性があるのかがよくわかる。

カーン氏は、教室で1人の教師が大勢の生徒に向かって一斉に行う十把一絡げの教育ではなく、一人一人の個性に合わせた内容とペースの教育があるべきだという信念のもとに活動している。高校時代の本当にやりたい勉強を学校に理解してもらえなかった体験や、MIT時代の大勢で授業を受けるより個人のペースで勉強した経験も伏線になっているようだ。

一人一人に合わせた教育。
いつでもどこでも、気付いた時に必要な教育。
これは大人になってからも同じであるという。
幼児教育のモンテッソーリ教育の思想である、自発性と敏感期と周りのサポートの完備、に近い。
断言するが、この潮流はこれからの主流になるだろう。
教育における千年に一度の革命、教育のパラダイムシフトとは言い過ぎではない。

本書でもう一つすごいのは、カーン・アカデミーの可能性にかけて、安定高収入の証券アナリストの座を捨ててNPO法人を立ち上げたカーン氏と(家庭もあるので逡巡はあった)、同じく仕事を辞めてカーン・アカデミーに参画した超優秀な友人の「前向きさ」だろう。
何かが変わる、変える場に立っていることが見えたのだろう。

カーン・アカデミーについては、以前にも「教育のパラダイムシフト」としてポストしたが、TEDのプレゼンもわかりやすいので併せて視聴をお勧めしたい。

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話を1号に戻す。
1号の数学も、基礎である小学校のどこかで算数の何かを欠落したまま、または、誤って理解したまま進級したのが躓きの原因だと、彼の親たちはにらんでいるわけで、過去の躓きを未来への飛躍に変えるにはカーン・アカデミーのような場はそれこそ最適に思える。
カーン・アカデミーのライブラリの日本語訳版は、中学生以上が対象でまだライブラリが充実途上なので、カーン・アカデミーと趣旨はほとんど同じで国産のeboardでトライしてみることにした(トライするのは1号だが)。充実度ではカーン・アカデミーにはまだまだ及ばないけど、心意気を買った。
そのeboard上でもカーン・アカデミーのライブラリの翻訳や、算数の問題についてはカーン・アカデミーのフレームワークを用いているようだ。 オープンである。
結果が出れば、このblogで報告したい。

ちなみに、同じeboardでもアメリカのeBoardとは別物である。そっちは教育のコミュニケーション基盤のようだ。まだ日本には同じようなプラットフォームはないようだ。


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