2011/01/07

「もっとも美しい数学 ゲーム理論」(文庫版) トム ジーグフリード 著, 冨永星(訳)

読んで、ゲーム理論とは、戦略と安定(ナッシュ均衡)の理論、と解釈した。
「物理学も生命体も、つまるところ安定や均衡を求めている」(p.373)ので、そのために必要な合理的な戦略をゲーム理論が提示することによって、現実世界がその合理性からいかに乖離しているかを示す標準器の役目を果たしているように思えた。

ゲーム理論が勢力を拡大している学問は目次からさらっていくと、経済学(言わずもがな)、生物学(種自体が戦略)、脳神経学(マクロはミクロへ)、人類学(文化も混合戦略)、社会物理学(平均的人間)、ネットワーク理論(進化と成長)、量子力学(新たなゲーム理論)、統計力学(戦略とは確率)と多様である。

ちょっと引用しよう。
ゲーム理論が、科学において非常に大きな力を持ちうるとすれば、それは、この理論の知的広がりが大変大きく、一見矛盾するかに見える様々なものを抱え込むことができるからである。だからこそ、この多様な世界、行動にしろ性格にしろじつに多彩な人々が入り交じり、文化レベルも種々雑多で、無数の種が混じり合ってできあがっているこの世界を説明するための構造を、提供することができるのだ。ゲーム理論の中では、利己心と共感、競争と協調、戦争と平和が並び立つ。ゲーム理論を使えば、遺伝子と環境が互いに働きかけるさまや、遺伝と文化が互いに働きかけるさまを説明することができる。ゲーム理論は進化による変化と安定性の対立を調整し、仲立ちすることで、単純さと複雑さとを結びつける。個人の選択と集団としての人間の社会行動とを結びつけ、精神の科学と精神を持たない物質の間に架け橋を造る。(p.376)
ちょっと大げさな気もするが、著者はこのようなゲーム理論の統合性に「美し」さを見出したのではないか。

ちょくちょくサイトを訪れるfinalventさんが解説を書いているのを見つけ驚いた(少し上から目線で固いかな)。

つられてジョン・ナッシュの生涯を描いた「ビューティフル・マインド」も手に入れ、悪ノリでこういう記事(睡眠の必要性または覚醒の必要性(ゲーム理論から))も書いてみた。

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