2010/09/13

「総員玉砕せよ!」水木しげる作

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「日本はなぜ負けるのか―敗因21カ条」山本七平著
「虜人日記」小松真一著

NHK朝の連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」をNHK BShi(7:30)、NHK BS2(7:45)、NHK地デジ(8:00)と3連続して見るほどの家族そろってファンなのだが、そこから水木しげるに興味が沸いて、立ち寄った本屋でたまたま積まれていたものを手に入れた。ドラマの中でも「衝撃を与えた」と紹介されていたし、という軽いノリで購入。

水木しげるの実際の経験がベースだが、「日本はなぜ負けるのかー敗因21カ条」「虜人日記」をビジュアル化し、補間した内容だと思う。

南方へ出向き、ワケもなく毎晩殴られる日々を過ごす。というかワケはきっと暴力によって余計なことを考えぬよう思考回路を鈍化させ、命令に従順であるように仕向けるためだろうが、結局は「員数」というコマ扱いである。
丸太運びの作業中の事故や、魚を丸のみして窒息死、川ではワニに食われ、およそ戦争とは関係ないことで死んでいく兵士たち。従軍慰安婦の「女郎の歌」が始めに終わりにこの戦いを象徴するように流れていく。
「私はなーなんでこのようーな つらーいつとめーをせーにゃなあらぬ」
敵が上陸してからは、勝ち目なしと斬込隊を組織し死に場所を求める若い大隊長とゲリラ戦で徹底抗戦を唱える中隊長。結局は大隊長の命令に従うが、玉砕命令を受けた者たちは生き残っていはいけないという。生き残った者達の隊長は自決させられ、部下たちは再度の斬込に参じる。規律を守るため、大本営に報告した手前、などというが、人の命の軽さと言ったら…。「合理的だったはずの組織のすべてが、すべて不合理に見えてしまう」(「日本はなぜ負けるのか…」)のとおりである。
主人公の丸山が死に際してつぶやく。
「ああ」「みんなこんな気持で死んでいったんだなぁ」「誰にも見られることもなく」「誰にも語ることもできず……ただわすれ去られるだけ」
ただ忘れ去られるだけ。

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