2009/01/22

「『アメとムチ』の構図」渡辺豪著

仲間とスタジアムのようなところで待ち合わせ。直前に組織の罠だと気づき、ばれないように客席に回り込む。仲間に見つかったらおしまいだ。隠れて様子を伺っていると猫のようだな、とちらっと思う。どうか見つかりませんようにと思ったところで仲間と目が合ってしまう。このまま組織に捕まって後は殺される運命だと思うとものすごい不安と空虚な気持ちになったところで目が覚めた。不安な気持ちを引きづりつつ、安堵感が一気に押し寄せる。

サブタイトルは「普天間移設の内幕」
画像はないようで、出版元の沖縄タイムスは写真の無断転載禁止と謳っているのでやむを得なし。

普天間飛行場の沖縄・名護市辺野古地区への移設問題を防衛庁(当時)をはじめとした、政府側と、沖縄県、名護市、名護市周辺の町村、それに米国との駆け引きを内幕から描いている。
まさしく、アメとムチ。登場人物達の権謀術数の限り。
資料も充実しており、佐藤優風に表現すると、普天間移設問題に関わる国と県と市町村の内在的論理を知るには格好の本。

防衛庁事務次官守屋(当時)の暗躍ぶりが克明に記録されている。

機能拡張ともいうべきV字形案で政府と合意し(沖縄県は合意していない)、その後、防衛庁とのパイプが外れた後は沖合への移動を主張する現名護市長島袋の判断は理解に苦しむが、飛行ルートが集落上空を回避できればそれでよく、前市長岸本の「できるだけコンパクト」に目を背けたのは、空港の民間利用が念頭にあるのではないか(無理だろう、それは)。建設業界出身の島袋市長の対応が混迷に輪を掛けている。

小泉政権以降、政府の対応がドライになったとの指摘は、先のポストの県立病院独法化問題とも重なり、なるほどと思う。

本書にもあるように米国、日本政府、沖縄県の3者の構図を描いてみると、結局は移転しても移転できなくても懐は少しも痛まない米国の一人勝ちのようだ。

読んでいて、かなり違和感を感じたのは守屋も那覇防衛施設局長佐藤(当時)も、沖縄の戦後に終止符を打つつもりで普天間移設問題に関わってきたとの記述。「県内に移設」したら沖縄の戦後が終わるのか?
ここ沖縄では、先日も糸満市で不発弾が爆発し負傷者が出ている。

惜しむらくは「普天間飛行場代替施設案」の名称が、従来案、浅瀬案、沿岸案、L字案、沖合案、V字形案、など多くが提示されているにもかかわらず「普天間飛行場代替施設の位置」と称されたページには4案しかない。L字案は沿岸案なのかな。このページをもう少し拡充して、カヌチャホテルを含めた周辺の地図、普天間飛行場を含む、在沖縄の米軍施設の地図があれば、なおよいと思う。

詳細はさておき、読後の感想は、現那覇市長翁長のこの言葉に集約される。
「いつまでたっても私たちは外から与えられた基地という環境の中で、イデオロギーがどうのこうのと県民同士が闘い合って、自身で切り開くことができず巨大な権力の前で右往左往しながらやっている。県民どうしがけんかさせられている状況を早く脱したい」
基地は奪われた土地の上のものであって、与えられたものではないと思うし、建設反対派への批判も込められているが、「けんかさせられている状況を早く脱」すべきだとは思う。
# そう言う翁長市長も与党候補の選挙応援に際し敵対候補の悪口を言わないことが肝要だ。市政のリーダとしての資質を疑われてもおかしくない。数年前のことでも市民は覚えている。


話を冒頭に戻す。
夢から覚めて間もなく横を見ると左の腕に2号(♀4才)の両足が乗っている。寝るときの頭の位置は私と同じだったはずなのに、いつの間にか2号が寝相悪く180度回転している。こちらは180度回転した上に足まで乗せられることに合意した覚えはない。合意しなくても実力行使である。寝る前には想像するはずもなかったが、ともかく、足の重みで腕が痺れて変な夢を見たようだ。

悪夢は目が覚めればそれで終わりであるけれど、現実は夢とはほど遠く、例え現実から目を背けてもそこにはまた別の現実がある。結局現実は「自力」で道を切り開くしか無いだろう。

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