2010/01/25

RFPの作成と評価(実績版メモ) その2

今年度も仕事でRFP(Request For Proposal:提案要請)を実施する機会があったのでメモ。

前回のRFPの作成と評価(実績版メモ)もご参考に。

0. はじめに

RFP対象となったのは、ある構築物に関するRFPである。汎用品はなく、モデルタイプをカスタマイズするような物である。
コスト削減がまず第一の命題であり、懇意にしている業者だけではなく、広くあまねく競争してもらう必要があった。

前回と同様、こちらから要求仕様を出して、それに対する回答と見積書を提示してもらい、それぞれを採点する方法で行った。
今回は「さらにより良い条件を引き出す」ことを念頭にプログラムを組んだ。
具体的には、提案書と見積書の中身の評価を一発勝負ではなく、提案書を受領後、1次評価を行い、提案者により
  • 仕様書の修正
  • 見積書の減額
を行う調整期間を設けた。これにより提案書は良いが見積額が高い提案者への価格交渉、提案書に不足はあるが見積額が安い提案者への再提案の機会を創出し、より目的に合致する方向に提案を持っていくことができる。
調整後に2次評価を行い、その結果をもって発注先を決定することとした。

1. 準備

RFPは時間がかかるのが普通で、予め提案依頼予定の業者にRFPを実施する旨伝えておいて、心の準備をお願いするのも必要である。ただし、公正を期するために情報が事前に漏れないよう、社内で箝口令を敷くことは必要である。

RFPを依頼するにあたって作成した文書は次の通り。
種別
内容
RFP実施通知書
目的、結果の扱い、提出物、日程、窓口、連絡手段等を記載
RFPフロー
日程をフロー図にした
機密保持同意書
提案までに、または、提案と同時に提出してもらう
要求仕様書
提案して欲しいこと

また、提案書提出までの期間の質問はメールでのみ受け付け、質問内容と回答をExcelでまとめ、その都度、質問者を隠蔽し全提案者へBccで公開した。
これら書類の中で要求仕様書の中身がRFPのポイントなのだが、具体的には書けないので大まかに言うと、
  • 概要
  • 機能
  • 性能
  • 提出物
  • 納期
  • 保証
に分けた。これらは、各社の仕様書やカタログと自社の過去実績から作り上げた。
可能な限り関連しそうな法令も調べ上げておく。

また、要求仕様書は満足することが必須の項目と、提案があればよいが代替案があればそれで満足というものもある。場合によっては重み付けをすることも必要である。今回は重み付けを行わずに一律に点数を配分したが、ここで大事なのは、「外せない仕様」が何なのかをはっきりさせ、その項目への提案が不満足であるなら、提案書が「評価に値しない」ということを明確にしたことである。
計画額は明示しない。

2. 具体例

以下、具体例を示すが、数字はすべて変えてある。

今回の要求仕様書は、107項目でそれぞれに○(5点)△(3点)×(0点)で配点し、満点を535点、最低点を0点とした。

見積書は、計画額を0点とし0円を満点とした、例えば、計画額が2000万円なら、2000万円の見積書で0点、0円で満点の535点、逆に計画額オーバーの4000万円で-535点となる(6000万円だと-535*2=-1070点と比例する)。
いくら仕様が良くても予算オーバには厳しいコスト重視の評価である。

期待値は、仕様書満点(535点)と計画額同額(0点)とした535+0=535点である。

具体的には以下のように4社から提案を受けた1次評価の結果を例示する。

1次評価の結果
提案者
提案書
見積書
合計
順位
A社
503点
-447
56点
3位
B社
508点
-208
300点
2位
C社
434点
-398
36点
4位
D社
356点
197点
553点
1位

RFP提示から2週間、提案書受領から2週間の評価期間を経て、各提案者への調整期間としてさらに2週間を調整期間を経た2次評価の結果は次の通り。
この提案の2週間、調整期間の2週間というのは提案者にとって、あまり猶予の無い期間であるが、さりとて短すぎるという訳でもないことを忘れずに。
ここでC社はある重要な項目「外せない仕様」が対応できない旨の申し出が有ったため、2次評価の対象から除外した。

2次評価の結果
提案者
提案書
見積書
合計
順位
備考
A社
503点
-405
98点
3位
見積額減額だが計画額オーバー
B社
508点
-98
410点
2位
見積額減額だが計画額オーバー
C社
434点
-398
36
4位
計画額オーバー。「外せない仕様」不満足のため評価対象外
D社
486点
110点
596点
1位
提案内容変更とそれに伴う見積額アップ。唯一の計画額以下

A社は見積額減額の要請を行ったが、結果は若干減額であった。
B社も同様に減額の要請を行ったが、結果はある程度の減額を得られた。
D社は提案書の内容はそこそこだったが必要十分であり、その上見積額が最安であり、かつ、計画額を下回った唯一の提案者でもあり、コストパフォーマンスがよいと判断し、採用が確定した。
D社のみが計画額を下回っているが、計画額自体が意欲的な設定であり、D社は戦略的な価格設定を行い、今回の案件での儲けはないと思われる。よって、どこかで挽回(赤字の回収)してくるものと思われる。通常だと提案内容もさらに優秀なB社が妥当である。

落選したA社~C社に対しては、個別にメールで採用結果を通知した。また、希望があれば、電話または面接による落選理由の説明を行った(もちろん3社とも希望した)。これは今後の提案へのモチベーションを上げてもらうための必要な措置であり、また、提案書作成および2次評価に向けた各社の担当者の社内調整の苦労に報いるためでもある。彼らは負けた理由を社内で必ず問われるはずなので。なお、メールでの落選理由の説明は、後で担当者以外へ転送されたときに政治的圧力などによりトラブルの元になりかねないので行わなかった。
社内では不正を疑われないためにも、1次評価、2次評価の内容と決定に至る過程は担当者と意思決定者以外の第3者にも求めに応じて公開できるようにしておく。

以上により、評価第1位のD社へ発注が確定し、日ごろ懇意にしている業者は落選した。
当初の目的であるコスト削減も果たせそうだ(完成まではわからいので楽観的希望)。
さらにD社と細々とした詳細の詰めを行い、最終的な金額を確定し、発注に至った。

3.さいごに

RFPの成功の可否は、いかに提案者に乗ってもらうかであって、あまり厳しい要求だと早々に降りてしまうし、甘い要求だと足元を見られてしまう。
また、どこかと癒着しているのではないか、当て馬ではないかと思われないためにも、公正を期することが必要である。
RFPという競争において、より良い提案を得るためには提案者の気持ちになる必要がある。

提案2週間、評価2週間、調整2週間という期間は妥当だったと考える。そのまえにRFP(要求仕様書)作成には他の作業も並行しているので実質1ヶ月程度、細々とした外部との調整等を入れると2ヶ月程度かかった。また、採用者決定後の詳細の詰めに1ヶ月、RFP開始から発注までの社内処理は合わせて0.5ヶ月かかったので、取りかかりから発注までに5ヶ月はかかったことになる。専念すれば3ヵ月にまで短縮出来そうではあった。


画像はWikipedia Commonsからパラナル天文台の360度パノラマビュー

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