2008/08/20

RFPの作成と評価(実績版メモ)

画像はWikimedeia Commonsからネットワーク・トポロジー。

RFP(Request For Proposal: 提案要請書)を作成、評価する機会があったのでメモ。

RFPに関するHow-toはネットに豊富に転がっているので、ここでは、どうやったかの実績を書く。
備忘録代わり、かつ、お仕事関連なので言葉足らず、実名、金額を含む数値は仮となっている。
個人的には2度目なので今回は評価方法を少し工夫してみた。
このRFPの評価方法のポイントは
  • 提案内容とコストが1:1の得点配分であること
  • コストは保守5年分を含めた総額方式となっていること
  • コスト評価が0円で満点、総定額と同額で0点となっていること
  • 想定額を超過した場合は失格とせずマイナス点となっており、予算に柔軟性がある場合はよりよい提案を受け入れる可能性があること
  • 提案内容に大きな差が出ない場合を想定して、コストが減点対象となっていること
  • なので、コストが大きすぎるとマイナス評価で合格の可能性が低くなること
である。

0. 前提
  • 目的 :システムの更改(更新)
  • 内容 :新システムの構築および既存システムの切替作業
  • 予算 :構築費(初期費)50百万円 / 保守費=構築費の10%=5百万円/年
  • 納期 :発注から4ヶ月
  • その他:RFPの評価合格者に発注
1. 情報収集
  • どのくらいの予算が必要か、何を依頼し、何を自前で準備するかを振り分ける
  • 納期までが短いので情報収集先=提案依頼先を絞っておく
  • つまり、依頼先はある程度業界知識のあるところ
  • 情報収集をちゃんとやろうと思うとRFI(Request For Information: 情報提供依頼書)の形態を取るが今回は時間がない
  • なので、提案依頼先にある程度情報を開示した上で、個別に提案を依頼
  • 各提案依頼予定先のよりラフな提案を受領
  • システムの概要、概算費用を把握
  • 総定額を設定する(今回は初期費50百万円、保守費5百万円/年とした)
2. 準備
  • RFP本文の準備
  • 既存のシステムはどうか、どういうシステムを構築したいか、納期はいつか
  • RFP通知文 (RFP実施、窓口、日程、作業フロー図等、守秘義務を明記)
  • NDA(Non-Disclosure Agreement: 秘密保持契約)は時間の関係で締結せず、RFP通知文に記載(「お互い漏らさないこと」)
  • 依頼先によりNDAが必要であれば締結の意志を示す
3. RFP内容 (提案して欲しいこと)
  • システムの提案(概要、構成図、ラック実装図、SWバージョン一覧、機器仕様)
  • 見積。内訳は以下
    • ハードウェア
    • ソフトウェア
    • 工事などの経費
    • 切替作業費
    • 訓練・研修
    • 保守
  • 性能
  • スケジュール
  • 保守・サポート(体制、サポート、保証)
  • 要求機能(稼働条件、xx機能、yy機能、...、)
  • システム諸元(前提諸元、拡張方法、ログ関連)
  • システム切替作業
  • 訓練・研修(2時間x4回など)
4. RFPの通知
  • 依頼先に同日、時間を違えて個別に説明
  • RFP通知文と本文を紙で手渡し
  • 依頼先の連絡先メイルを確認した後メイルで電子ファイルを送付
  • 要求事項に対応する回答一覧表(Excel)も送付
  • 回答一覧表は後で集計・評価しやすく、また提案書に記述のない事項もここに書いてあることが多いので必須
  • 窓口は説明当日から提案〆切日の2営業日前17時まで開設(回答期間を考慮)
  • 提案〆切は持参で17時まで厳守(実は交通事情を理由にすると1時間程度はOKだったり)
5. 質問の受付
  • メイルでのみ受付(記録に残すためとクールに恩情をかけないため)
  • 全質問、全回答は公開する
  • 質問回答リストを作成、質問受付日、質問内容、回答日、回答内容を明記する
  • 質問回答リストを送付
  • 質問者を匿名にする
  • 回答は質問回答リストを全依頼先へ公開・送付(Bcc送信または依頼先個別送信)により実施
6. 提案の〆切
  • 提案書を受け取る(紙ベースを基本とし、別途電子ファイルの送信を依頼する)
  • 提案書、見積をチェック
  • 不明な点はその場で問い合わせ
7. 評価方法(提案内容)
  • 評価は複数人(3人以上)が望ましい(不正防止のため)
  • 各評価者の平均得点を各提案者の得点とする
  • 得点の評価者バラツキを測るため評価者の標準偏差も計算する
  • 得点の提案者バラツキを測るため提案者毎の標準偏差も計算する
  • 提案内容は100項目
  • 項目により重み付けをする(1~3、たとえば1:120項目、2:60項目、3:20項目 合計300)
  • 各項目は5点満点(0,1,2,~,5の6段階)
  • 点数の配点基準は次の通り
    • 0: 要求を全く満足しない
    • 1: 要求を一部満足しない
    • 2: 要求を一部満足しないが、別提案があり運用で代替可能である
    • 3: 要求を満足する
    • 4: 要求は機能を満足し、スペックが要求以上である
    • 5: 要求を満足し、さらなる提案がある
  • 提案内容の期待点は[3: 要求を満足する] * 100項目 * 重み付け(300) = 900点
  • 提案内容の満点は[5: 要求を満足し、さらなる提案がある] * 100項目 * 重み付け(300) = 1500点
  • たとえば次の通りの得点となった
提案内容
A社
B社
C社
得点
900
850
950
順位
2
3
1
  • 要求事項に対し、回答が「可能です」「できます」の羅列であると本当にできるかどうか確認する必要がある
8. 評価方法(コスト)
  • 提案内容とコストで得点を1:1の同配分とした
  • コスト総額は初期費+保守費*5年で合計した
  • コスト総額が総定額と等しい75百万円(=50百万円+5百万円*5)であれば0点とした
  • コスト総額が0円であれば満点の1500点(提案内容の満点と同じ)とした
  • コスト総額が想定額を超過した場合はマイナス点とした(予算に柔軟性が無ければその時点で失格とする)
  • コスト総額は総定額との差分を取り、その比率(対総定額)により配点した
  • つまり、コスト総額80百万円の提案の場合、総定額との差分=-5百万円 →(比率) -5/50 = -0.1 →(得点) -0.1 * 1500 = -150(点)となる
  • たとえば次の通りの得点となった
コスト (単位:百万円)
A社
B社
C社
備考
コスト(初期費)
45.0
40.0
51.0

コスト(保守費)
4.5
4.0
2.0
年額
コスト(保守費5年)
22.5
20.0
10.0
= コスト(保守費) * 5
総コスト(5年)
67.5
60.0
61.0
= コスト(初期費) + コスト(保守費5年)
総定額との差額
7.5
15.0
14.0
= 75 - 総コスト(5年)
比率
10.0%
20.0%
18.7%
= 総定額との差額 / 総定額
得点
150.0
300.0
280.0
= 比率 * 1500(満点)
順位
3
1
2


9. 評価方法(総合)
  • 提案内容とコストとの合計得点で合格者を決定する
  • たとえば次の通りの得点となった
総合得点
A社
B社
C社
備考
提案内容得点
900
890
950
期待点は900点、満点は1500点
コスト得点
150.0
300.0
280.0
期待点は0点、満点1500点(0円入札)、総定額超過はマイナス点
総合得点
1,050.0
1,190.0
1,230.0
期待点は900点、満点は3000点
順位
3
2
1

  • 上記の例
  • A社は、提案内容は期待点に達し、初期コストは想定額内、保守コストも想定額内だが他社にくらべ高く、総コストは一番高い
  • B社は、提案内容は期待点に届かず、初期コストは最安、保守コストも想定額内だがやや高いが、総コストは最安
  • C社は、提案内容は期待点を超える点があり、初期コストは一番高いが、保守コストは最安で、総コストは安め
  • 結果、C社が提案内容によりコスト最安(最高得点)のB社を抑えて総合得点が最高の1位となった
10. 評価合格者決定
  • 評価内容について評価者で妥当性を検討する
  • 問題なければ順位に基づいて1位を評価合格者とする
  • 評価合格者に通知する
  • 評価不合格者に通知し、評価内容の概要を伝える(敗因を社内に伝えるはずなのでネタを提供してあげる。次の提案依頼にそっぽ向かないように)
本音を言うと点数付けは周りの説得材料に過ぎず、個人で判断を迫られれば、依頼先の技術力や実績、経営の安定性などなど別の指標を用いることになると思う。RFPの評価で本当にその評価が正しいかどうかはよくわからない。点数化するものは何でもそういう側面があると思うが、そもそもの問題設定=要求事項の記述が間違っている可能性もあるし。
正しいかどうかわかる頃にはきっと次のRFPを書いている羽目になっている。

(2010/1/25追記 その2も書いた)

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