老朽化で閉鎖が決まった久茂地公民館の「らせん階段」はすばらしい。
エレベータを取り巻くように設計されたそれは6Fから1Fまで下りるのが苦にならない。1号(♂11才)は遅いエレベータを待つより階段で下りる方を選択していた(下りながらエレベータの各階でボタンを押すのはヤメテ欲しいが)。上りは下りよりも重力の分キツイが、それでも普通の階段よりだいぶ楽である。
なぜか?
階段の高さが低いから?
否。大まかに測ったが17cmと普通の階段と同じである。
では答えは?
階段の奥行きが長い(広い)のである。
らせんの内側が普通の階段と同じ22cm程度、外側は測り忘れたがその倍はあったように思う。
らせん階段の外側を上ったり下りたりすると、そのときの人が進行方向の上下に向かう角度が通常の階段より緩やかになる。そのかわり移動距離は長くなる。
しかし、同じ高さを上るのに人に優しいのは、角度が急な階段よりも緩やかな階段であると思う。移動距離が長くなることを補って余りある。
角度が急なのは専有面積が小さくて効率がいい。 階段はそこでくつろぐ訳でも何かを生産するわけでもないので一種の必要悪の部分として冷遇されがちである。効率的なものは、その分何かにしわ寄せが来るわけで、階段の場合は人には優しくないと感じる(幸せが来るならいいんだが)。
実家の階段が踊り場を境に角度が変わるという摩訶不思議な階段で、角度の急な方と緩やかな方では緩やかな階段が心理的肉体的に上りやすいと実体験として感じていたので、自分の家の設計者には「階段はできるだけなだらかに」と要求を出したほどである。まぁ、家が狭小なので理想的にはできなかったが設計者は自身のセオリーより角度を緩やかにしてくれたようである。
これは沖縄の城(グスク)の人が通る斜面に時々思い出したように段差をつけた作りにも通じるものがある。
初めてこの「らせん階段」を下りたときはこの私の経験則を証明してくれたようで、嬉しかった。
世の建築家に上り下りしてもらいたかったが、残念ながらもう閉館である。
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