2017/10/25

uyabin の母、老人ホームへ行く

7月のある日の深夜、弟のところに警察から電話があり、母親の深夜徘徊が発覚しました。

自分の家、とは言っても自分のお金で建てた私と弟の実家ではなく、自分が生まれ育ったオジーとオバーの家を探していたそうです。
オジーとオバーの家を探してタクシーで行くのはいいけれど、帰ってこれないというのは今まで何度もあり、お隣の人や近所の人に助けてもらったり、弟が探し出したりしながら、でも、深夜に外出というのはありませんでした。
母親は一人暮らしで、実家から徒歩10分に住む弟が通勤の傍ら朝晩顔を出していたのですが、その日の夜も、帰宅前に顔を出して無事を確認したのに、寝ているところを起こされたわけです。仕事も家庭もある彼でもさすがに24時間監視は出来ません。しかも、弟は転勤が決まって、時間も不規則になるというので、ここで降参です。
一人暮らしの潮時だと兄弟で意見が一致します。
他力に頼ること、つまり、老人ホームの世話になることにしました。

そうと決まれば、あとは行動するばかり。
ケアマネさんと相談し、実家から車で5分ほどの老人ホームを紹介され、弟夫婦と見学してみると、父親のときに見学した幾つかの老人ホームとは違い、規模も大きくなく職員はアットホームな雰囲気で、でも、事務の人は真面目に仕事をしていて、ここなら大丈夫そうだとほぼ即決で決めました。
インターネットでは満室と出てましたが、情報が古いようで、現実の情報はまた違うものだといらぬところで再認識したのはご愛嬌です。
当然、母親も見学し、職員さんとも面談します。
あれほど執着のあった洋服にも今はまるで未練はなし、認知症は進行しています。
母親には、兄弟それぞれ別々に、老人ホームの方が必ず誰か人がいるので夜も怖くない、安心だよと諭します。今の彼女はこれで納得するのです。

老人ホームより、入所が決まったとの知らせを受けたのが7月の下旬、そして、準備やら手続きやらを済ませ、とうとう、8月の中旬に入所します。
最初の訪問のとき、帰り際に追いかけてきて、出口の横の大きな窓から、まるで子どものように恨めしそうな顔でこちらを見ていたのを覚えています。「なんで、私を連れて行かないのか?」とでも言っているかのように。
職員さんによると、老人ホームに入所して最初の3日間は警戒していたのか、ご飯もあまり食べないか箸をつけなかったらしいです。その後徐々に緊張も溶けてきて、やっと落ち着いてきたと言います。
週1回は老人ホームに顔を出すようにしていますが、彼女がだんだんと老人ホームでの生活を受け入れている様子を感じ取ることができます。
彼女の個室でとりとめのない会話をするのですが、「オジーとオバーの家に行こう」と必ず言ってきます。オジーもオバーももうだいぶ前に亡くなったと話すとびっくりするのです。
彼女の脳にはもう新しい記憶が定着する余地はあまりなく、固着した記憶の中で生きているように思えます。

ここまで書いていて、弟が頻出しています。子供時代の育て方(年子だったので3年ほど信頼する夫婦に預けられてた)にわだかまりのある弟が、母親と口喧嘩しながらも最も母親の世話を焼いているというのは、なんと言えばいいんでしょう。

画像は母親が入所する10日前に撮った夕景。
人生の黄昏時は自分で選べませんね。
ただ、これまで生きてきたやり方で運命に向き合うだけなのかな、と長年の喫煙と不摂生で内臓が限界を迎えて亡くなった父親と脳が限界を迎えつつある老人ホームにいる母親を見て思います。

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