2016/05/19

沖縄彫刻都市 (尾形一郎、尾形優 著)

サブタイトルは
「沖縄はなぜコンクリートブロックで溢れているのか?」
「建築から見たもう一つの沖縄戦後史」
でとても適切。

ジュンク堂でたまたま見かけて値段も見ずに購入。
案外高かったが、戦後、雨後の筍のように発生し今も生存し続けている沖縄のコンクリートブロック建築に興味がある人には面白い本に仕上がっている。

戦後アメリカ軍が持ち込んだコンクリートブロックで彫刻を行う能勢孝二郎氏の作品から物語を導入していき、戦後のコンクリートブロック建築が沖縄に普及していった過程を追いかけるといった風。
英語での要約もついているのでちょっとした沖縄建築の紹介にも使える。
コンクリートブロックそのものへの彫刻というオリジナリティと、コンクリートブロック建築が織りなす他にない彫刻然ととした佇まいを合わせて彫刻都市と呼んでみたようだ。
コンクリートブロック建築に関する記述では、沖縄に対する異邦人としての視点もからめて、コンクリートブロック建築の自由さを他の地域にはない特徴として描いているのが面白い。また、沖縄工業高校が、戦後すぐの人材不足の中、工業高校そのものの目的である速やかに技術を身につけて世に出すことを地で行い、建築関係者排出の孵卵器として役割を果たしたなどを例として、戦後沖縄の建築史が分かりやすく記述されていてこれも面白い。
著者は親子と思われる2名なのだが、内容の時間的スケールからみて、前半が子、後半が親の執筆だろうか。

沖縄は「石灰岩文化」と定義した「琉球の住まい」(福島俊介著)(amazon)があり、沖縄の住宅をその集落や歴史から捉えた本として今読んでもとても良い本だと思うが、「沖縄彫刻都市」は沖縄の石造建築の歴史を踏まえつつ、コンクリートブロックとコンクリートブロック造の建築に対する著者の情熱を冷静な文章で綴っているように思えた。

もっとも、現代の沖縄では、コンクリート造(RC)による建築が主で(我が家もそうだ)、木造は相変わらずほとんど造られないが、コンクリートブロック造(RCB)の家の建築数も以前ほどではない。RCが主流な理由は、RCBよりデザインが比較的自由に出来ること、その自由さを活かしたモダンなデザインを行える建築家が多くなってきたことにあるかと思う。RCBは昭和の遺跡といった感も個人的にあるが、RCBも、RCBの上からモルタルを塗らずにRCBであることを表面から隠さず、そのレゴのような規格的側面を表に出してモダンな設計に変化しつつある。
また、同じ琉球諸島の中でもRCBの家が沖縄には多く、奄美大島では木造建築がメインであるのは台風だけが理由ではないのでは? と問うが、奄美と沖縄では台風の影響はかなり異なるように思うし、現地で木造住宅を見ると沖縄では台風で吹き飛ばされそうな家が何十年も残っているのはそれを裏付けるものではないかと思う。





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