という記事を書いた。
米軍基地内の法律の適用は、デフォルトでは日本の領土内であるので日本の法律が適用されるが、日米地位協定によって適用除外になる場合が結構あって、ほとんど法律的には国外扱いと考えるのがよい、というのがそれまでの私のもやもやとした結論であった。
そんなある日、時間つぶしに本屋によると、まさに日米地位協定の入門書があった。これで「もやもや」が解消されるのではないかと思い、手に入れてみた。
著者の一人である前泊博盛氏は元琉球新報の記者であり、執筆者は他に末浪靖司氏、新原昭治氏、石山永一郎氏などがいる。
高校生でも読めるように、というシリーズの意図があるので、そこそこ読みやすいが、やや扇動的なところもあってそこは注意が必要である。
本書の言いたいところは、実は本書のタイトルの主語が隠されているところにあって、主語をXXで補ってみると以下のようになる(ついでに「入門」も省いた)。
XXにとって、本当は憲法より大切な「日米地位協定」となる。
このXXに「誰」「どこ」が当てはまるか考えるといろいろ見えてくるものがあると思う。
この本を読んで考え付くのは、外務省、政府、米国政府、米軍などなどである。
おお、国民不在ではないか。
以下、本書を読み終えての感想。
まず、日米地位協定はありていに言えば、不平等条約である。
沖縄は米軍基地が密集しているため、米軍基地や米軍人に物理的に近く、事件や事故等が頻発してきたので、人権に関わる不平等、たとえば、自動車事故を起こしても基地に逃げ込めば知らん顔、復帰前はあきらかな殺人でも逮捕できないなどがあり、命や生活に深くかかわるので、日米地位協定についてシツコク追求しているが、沖縄だけでなく、日本全体にこの協定がかかっていることを理解している人は少ないのではないか。
また、憲法というのは、改憲の是非はともかく、国の根底をなす法律なのに、最高裁判所が日米地位協定に関わるものについては是非の判断を放棄するというのは、司法として、また、国として終わっているのではないかとの印象を抱かせる(砂山事件での統治行為論)。
横道にそれると、環境基本法の第十三条では放射性物質が適用除外になっていたことを本書で初めて知った(Wikipediaの同項目は未だ修正されていない)。つまり、原子力関連は逃げ道を用意していたのですね。
もっとも、本書の発刊直前に改正(平成二三年一二月一四日法律第一二二号)になっている。
本を読み終わって、上手く扇動に乗せられた気がしたので、バランスを取るために、アマゾン(画像をクリックでも遷移)のレビューで厳しい意見にはどういうものがあるのかと思って星1つや星2つのレビューを読んでみると、「地位協定が沖縄のものとして語っている」(本書での指摘は、沖縄以外にも適用されているのだよ、としか読めなかったのだが)とか「中国脅威論」とか「3人の名前が出ていなくで視野が狭い」とかで、日本が法治国家であることを理解していない方のレビューのように思えてしまい、ちょっと拍子抜けであったことを告白する。
日米地位協定擁護論というものがどこかにあるのかしら?
国の統治は法律が基本なんですよね。
法律があって初めて機能する。
外国との付き合いが重要という政策ならば、それで全然かまわない。
その憲法に代表される法律より、外国との協定を優先するというのは理解ができない。
日米地位協定に関しては、国民が知らなさすぎるのか、うまく隠ぺいされているのか、両方だと考えるのが妥当なのか。
あの「もやもや」は解消されたが、別の「もやもや」と入れ替わった。
そんなことを考えさせられた1冊。
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