2013/07/16

映画「人生、ここにあり!」

2008年のイタリア映画。
原題は"Si può fare"で「やればできる(You can do)」の意のようで、全くその通りなのだが、一方の邦題はいまいちインパクトが無い。少なくとも私の記憶に残りにくい。たとえば「ここに人生あれ!」「人生はここに!」「これこそ人生!」などと混乱しがち。

期待していた以上に面白かった。
3号(♀5才)も含め、家族全員で楽しめた。

エンディングで分かったが、実話をベースにしたものらしい(ノンチェッロ協同組合)。
背景には1978年にできたバザリア法により、イタリアでは精神病院が廃止され、治療は患者の自由意思に委ねられていることがある。
人には必ず個性があって、一人ひとり違うものだが、「一般」からかけ離れると、何かとラベルを貼って、「社会」から隔離するようになる。その象徴が精神科の隔離病棟になるのだが、イタリアにはない。彼らを受け入れている、ある協同組合が今回の舞台。




過激だ、時代遅れだ、と労組をクビになった男が派遣されたのは元精神病患者で構成される協同組合のマネージャ。
元患者に与えられた仕事は、市から委託された切手貼りと宛名書きの非常に安価な単純作業。元患者たちには精神科医のコントロールの元、毎日多量の投薬が行われており、いくらかボーっとしている。ただし、協同組合の運営はマネージャに責任があり、精神科医にはない。ある日、男は、患者の切手貼りがでたらめではなく、封筒をパラパラマンガのように並べてみるとちゃんと意図があることを理解する。そこから、男は患者にはそれぞれ固有の才能が有り、患者を人として扱わないやり方に反発して、一念発起する。これまでに組合で積み上げてきた合議の手法を使って、何かみんなできることで、給料を得て、自立できることを考え、理解を持った別の精神科医とともに寄木の床張り業者として市場に参入いく。男は元患者にそれぞれその特性を生かした役職をつけ、個性を最大限尊重する。精神科医(2番目)により投薬量も抑えられ、次第に元患者やたちはイキイキし始めていく。
その過程でドタバタや色恋に伴う悲喜劇を織り交ぜながら、人とは、社会とは、障害とは何かを考えさせる。

映画を見ながら、患者たちが、男の話を聞く耳を持っているというのが幸運だな、と思った。聞く耳を持たない人では、こうはうまくいかないだろうと。
もっとも聞くことはできるが、それを受け止めてからの反応が人それぞれで過激なので精神病として扱われる。しかし、それは個性であり、暴発を人間的にコントロールすることでうまくいくのでは、と考えさせられる。

悲劇を迎える場面で男が追いつめられるが、悲劇は何時誰にでもあるさ的な周囲の解決方法はイタリア映画だからか知らないけれど、男のチャレンジとこれまでのみんなの努力の成果を反映していて好ましく思った。

ちなみに、イタリアの協同組合に関してはこちらが詳しい。
イタリアの社会連帯協同組合 - 総研いのちとくらし
共同組合とはいっても、相互扶助だけでなく外部に開かれているのが特色。利潤追求ではないため、社会的弱者に焦点を当てた運営ができるとある。

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