子どもの活動を通して知り合ったアメリカ人パパは、日本語ができない。
しかも、彼は沖縄に在住する多くのアメリカ人のように米軍基地内で働くわけでも、基地の経済をあてにするでもなく、ましてや英語教師でもない。
そんな彼がここ沖縄で家族を伴いながらもどうやって生計を立てているか。
彼の職業はプログラマ。
アメリカからネット経由で仕事をもらい、成果物に対して報酬をもらう。
諸事情があり、近いうちにシンガポールに引っ越すそうだが、彼の仕事に変わりはない。
これは、彼のスキルと信頼により仕事を請け負い、出した成果物に対する報酬で生計を立て、住む所、働く所として世界の好きな所を彼が(家族と相談のうえ)自分で選んでいると言えるだろう。
英語ネイティブなのは言うまでもない。
ノマド(nomad:遊牧民)とは、IT技術の発達により、組織やオフィス(場所)に縛られない、個人商店のような新しい働き方をする人のことであり、社畜とは、自分のスキルだけでは生計がたてられず、会社様の言いなり、すがりつくような働き方をする人のことであると認識している。
報酬を払う側が責任を持って成果物を定義し、合意をもって契約を締結し、市場と照らしあわせた正当な評価と報酬で仕事を委受託する環境があれば、その結果、働く場所はどこでもよいのであり、冒頭のアメリカ人パパのような本当のノマドが実現する。
著者はまさにそれが実現している契約社会を紹介し、安易なノマド礼賛に警告を発する。
つまり、本書のノマドと社畜は表裏一体であり、この日本が世界の潮流に置いていかれている現状をあらわにし、これから迎えるであろう格差社会の訪れを示唆する。
副題にある「ポスト3.11の働き方を真剣に考える」というように働き方に対する考え方指南の本であり、同時代性であって今が旬であるが、仕事に対する考え方は時代普遍性もある。
著者は、ズバズバ言い放つが、その放言にも似た言葉の背後にあるのは、日本の実情に無関心でいられない愛情であり、海外での就労における知識と経験と考察のフィードバックであり、懐を豊かにする印税である、とは言い過ぎたが、これも契約に基づく報酬である。
ちなみに、著者はWire and Wirelessで「ロンドン電波事情」というコラムを執筆中であり、そこで私は初めて著者を知り、面白さついで、私はTwitterで@May_Romeをフォローし、本書を購入するに至ったのである。
# 1月中旬にkindle版で購入。冒頭の実例を最近知り得たのでレビュー。
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