オーディオシステムご紹介でご紹介したAyre Acoustics社のパワーアンプである。Ayre社のデビュー作であり出世作でもある。
2000年、まだ東京在住中のある日、秋葉原の中古オーディオショップを覗くと、目の高さの陳列棚に他の中古機器に混ざってV-3が鎮座していた。いいアンプだと噂は聞いていたが見たことはなかった。もしかしたら格安で手に入るチャンスかも知れない、しかし、聴いてみないことにはなぁ、中古販売の店で貸し出しは聞いたことがないけどなぁ、と3秒ほど逡巡した。で、中堅どころの店員に思い切って聞いてみた。「これ自宅で聴いてみたいんですけど、借りられますかね?」
その時はすでにPASSのAleph 3をP MK IIとコンビで導入済みだったので、慌てる必要はなかったが、ウニのようなAleph 3と違って清々しいデザインでもあるし、傾向が異なるパワーアンプというのも聴いてみたかった。駄目なら返せばいいし。
店員はちょっとびっくりしたような表情を見せたが、たぶん、1,2秒くらいだと思うが、私を値踏みし答えた。「いいですよ。」 聴けばこのお客はきっと買うと踏んだのかな。
その後は、借用期間はこちらの希望で2週間、送料はあちらの希望でこちら持ちとし、送付先を伝え発送をお願いした。
2000年といえば1号(♂9才)が生まれた年で、秋葉原に一人で行ったりする暇は無かったはずなのにどうしたことか、と思い出してみると、私の素敵な奥様が育児の勉強と自動車免許の取得を兼ねて1号と帰省していた頃だったんだなと合点した。束の間の独身時代復活みたいな。
しばらくすると、V-3が届いた。早速Aleph 3と交換して聴いてみる。うーん、あまり差はないなぁ、定価ベースだとV-3が2倍ほど高いし、これは買うまでもないかなというのが最初の3日間の感想。これで評判がいいというのはおかしいのではないか、とも思った。 ふと、V-3はバランス接続がいいというのをどこかで読んだのを思い出した。Aleph 3はアンバランス接続で、我が家にバランスケーブルの類はない。借用しているのをそのまま返すのももったいないし、勉強代だと思い、仕事帰りに新宿のヨドバシで、ベルデンのバランスケーブルを注文した。ベルデンは可もなく不可もなくという印象があってその代わり個性も控えめという観点で適任だと思った。で受注生産で1週間待ち。なんとか借用期間の最後の3日に間に合った。仕事帰りに受け取り早速Aleph P MK IIとV-3間をバランス接続してみる。するとどうだ。一聴してわかる躍動感と音場の広さ。これだ、これこれ、Aleph 3とは全然違う。これはもう返せない。3日間楽しく音楽を聴いて、店員に電話する「買うことにしました」。貸し出すことを決断した店員のリスクを考えると感謝の気持ちも湧いてくる。双方ハッピーである。Aleph 3はそのまま下取りとしてもらった。
V-3は故障しやすいとの噂もあったが、我が家の個体は故障知らず。電源のアースを取っているのがいいのではないかと思っているのだが、これは実験するわけにもいかないので推測の範囲である。ただ、今の家に越してきてからスイッチを入れるとハム音がブーンと小さく唸っているのが気になる。設置環境か電源系の接続の問題と思うが未だ解決に至らない。(2011/11/27追記:解決しました)
躍動感と音場がキモのアンプだと思うが、最低帯域(超低音)は制御しきれていないような印象もちょっとある。といっても大音量時の話である。今のスピーカでは全然わからないが、前のスピーカは密閉型で下までのびていたのでそう感じた。でも印象の問題かも。
少し熱いのが難点だし(寒くなった最近は猫が天板に乗って寝る)、そろそろ点検してもらわないといけないような気もする。スイッチを入れても何かが光るわけでもなく、稼働する部分もない。そうは言ってもV-3の出す音が実は我が家の軸でありシステムの中心的存在かも知れない。まさに縁の下の力持ちである。
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