英語題は、"WAR'S UNWOMANLY FACE" で直訳すると「戦争の女らしくない顔」
戦争には男の側の顔と女の側の顔があるけれど、女の側でない側面を、独ソ戦に参戦した女性兵士への多数のインタビューにより明らかにしていくというもの。
原題(ロシア語)は"У ВОЙНЫ НЕ ЖЕНСКОЕ ЛИЦО" らしいのだが、英語に訳すると "War Does Not Have a Woman's Face" と 「戦争の女性の顔はしていない」と日本語題と一緒。英語訳のときにタイトルを変更したんだな。英語題が意味深で良いように思う。
多数のインタビューににより、決して一括りにできない個々の人生にもかかわらず、ある共通項「悲劇」を浮かび上がらせているようである。インタビューではひとりひとりの人生がひとりひとりの言葉で反芻されており、飽きずに最後まで読み通してしまった。
ドイツとの開戦の報を聞いた女性、しかも10代を中心とした彼女たちは、ソ連の危機に際し、自ら志願して、あるいは、潜り込んでででも前線に行きついてしまう。志願してきた若き女性たちを前に男性兵士や幹部は一様に困ってしまっている。
中にはとても優秀な狙撃兵やパイロットもいるのですよ。
当初、なぜ女性が前線に? と合点が行かなかったのだが、ソ連体制のなか、男女平等が徹底されていたことがその最大の要因らしいとあとで知る。
つまり、教育である。
教育について触れているのは一人くらいで、そこはインタビューされた女性たちの反省の材料ではなかったらしい。
教育って受けてみるまでは無知なので評価ができず、三つ子の魂百までなのがつらいところ。
著者は2015年にノーベル文学賞受賞。
訳者はその報を待たずに他界している。
これだけのインタビューを行うだけでも大変、それを文章に起こすだけでも大変、まとめるのはなお大変、出版するのはもっと大変だったらしく、著者も訳者も執念で出版にこぎつけたことが訳者あとがきから伺える。
ともあれ、オススメです。
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