「代替医療」とは、筆者の言葉を借りれば、次のようになる。
興味深いのは、安全で有効であることが証明できる代替医療はなんであれ、実は代替医療ではなく、通常医療になるということだ。つまり、代替医療とは、検証を受けていないか、効果が証明されていないか、効果のないことが証明されているか、安全でないか、プラセボ効果だけに頼っているか、微々たる効果しかない治療法だということになりそうなのである。 (p. 479)別の言葉で言うと、EBM (Evidence-based Medicine: 科学的根拠に基づく医療) のカウンターパートとして存在する「医療」のことである。
自分の身の回りや世間を見回してみると、民間療法から本書にも出てくるような商売として成り立っている、鍼、ホメオパシー、カイロプラクティク、ハーブ療法を始め「痩せるXX」「これを飲んでがんが消えた」「XXに効くお茶」 などなど驚くほどたくさんあることに気づかせられる。
「いたいのいたいのとんでけー」だって実は代替医療である。
本書は共著になっている。
一方の著者サイモン・シンは、これまで、数学、宇宙、暗号といった、人間の英知の結晶とも言える「科学」に対する厚い信頼をベースに人間の知性の素晴らしさを訴えてきたが、本書では、人間の科学的でない態度、科学に対峙し、あるいは科学に目を向けない一面に、本気で怒りをぶつけているように思えた。
特に、代替医療を推進するチャールズ皇太子に対しては、「捧ぐ」と献辞までつけている(皮肉であり訴えでもある)。 その代償なのか、これまでの著書にあったワクワク感はない。
他方、エツァート・エルンストは医師であり、代替医療研究の専門家でもあり、本書が代替医療の驚くほどの多様性を網羅し、科学的検証を拾い上げている点に貢献しているようだ。
原題は "Trick or Treatment?" で、ハロウィンの "Trick or Treat" をもじったものであるが、'trick' の意味が「イタズラ」「たくらみ」「ごまかし」「奇術」「幻覚」であり、'treatment' が「治療」であるから、なかなかのダブルミーニングになっている。
日本語版単行本の時のタイトルは「代替医療のトリック」であった。しかし、文庫本化にあたっては「代替医療解剖」に変更されているのだが、「トリック」では表現が直截過ぎたのだろうか。
本書は共著になっている。
一方の著者サイモン・シンは、これまで、数学、宇宙、暗号といった、人間の英知の結晶とも言える「科学」に対する厚い信頼をベースに人間の知性の素晴らしさを訴えてきたが、本書では、人間の科学的でない態度、科学に対峙し、あるいは科学に目を向けない一面に、本気で怒りをぶつけているように思えた。
特に、代替医療を推進するチャールズ皇太子に対しては、「捧ぐ」と献辞までつけている(皮肉であり訴えでもある)。 その代償なのか、これまでの著書にあったワクワク感はない。
他方、エツァート・エルンストは医師であり、代替医療研究の専門家でもあり、本書が代替医療の驚くほどの多様性を網羅し、科学的検証を拾い上げている点に貢献しているようだ。
原題は "Trick or Treatment?" で、ハロウィンの "Trick or Treat" をもじったものであるが、'trick' の意味が「イタズラ」「たくらみ」「ごまかし」「奇術」「幻覚」であり、'treatment' が「治療」であるから、なかなかのダブルミーニングになっている。
日本語版単行本の時のタイトルは「代替医療のトリック」であった。しかし、文庫本化にあたっては「代替医療解剖」に変更されているのだが、「トリック」では表現が直截過ぎたのだろうか。
ちなみに、その文庫本では「文庫版訳者あとがき」が追加されている。
つまりは、サイモン・シンが代替医療業界が訴えられたこと、 一連の訴訟騒ぎを受けてイギリスの法律が変更になったこと、プラセボ効果(プラシーボ効果)に科学のメスが入ったこと、などが付け加えられ、本文の一章をなす程の重要性があるのは特筆に値する。
つまりは、サイモン・シンが代替医療業界が訴えられたこと、 一連の訴訟騒ぎを受けてイギリスの法律が変更になったこと、プラセボ効果(プラシーボ効果)に科学のメスが入ったこと、などが付け加えられ、本文の一章をなす程の重要性があるのは特筆に値する。
本書を読み終わると同時に、代替医療業界の行く末を案じたのは言うまでもない。
もっとも、プラセボ効果もバカにできないので「いたいのいたいのとんでけー」が無くなることもないと思う。
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